お知らせ

2023年10月23日

試験規模の連続フロー式オゾンベース病院廃水処理システムの性能

 

 

Performance of a Pilot-Scale Continuous Flow Ozone-Based Hospital Wastewater Treatment System

 

Azuma T., Katagiri M., Sasaki N., et al.
Antibiotics (Basel). 12. 932. 2023.
Doi: 10.3390/antibiotics12050932

 

薬剤耐性(AMR)は国際的にも公衆衛生上の重大な懸念となっています。近年、医療施設からの廃水が、ヒトや環境に及ぼす影響を評価し、AMR対策として有効な廃水処理方法を明らかにするための研究が盛んに実施されてきています。今回、試験的にオゾンを用いた連続フローシステムを総合病院に設置し(図1)、病院廃水に含まれる薬剤耐性菌(ARB)および残留抗菌薬に対する軽減効果を評価しました。加えて、メタゲノム解析*を実施し、廃水中に含まれる微生物の処理前後の特徴を解析しました。


結果、オゾン処理により、バクテロイデス、プレボテラ、大腸菌、クレブシエラ、ARG、および残留抗菌薬を効果的に減少させることができることが明らかになりました(図2)。病院廃水に存在したアジスロマイシンとドキシサイクリンの除去率は、オゾンによる処理直後から99%以上であり、レボフロキサシンとバンコマイシンの除去率は約1ヵ月間90%から97%の間を維持しました(図3)。クラリスロマイシンも容易に除去されましたが(81~91%)、アンピシリンは明確な除去傾向は認められませんでした。このことは、オゾン処理の残留抗菌薬に対する有効性は、抗菌薬の種類により異なることを示唆しました。


以上の結果より、費用の問題はあるもののオゾン処理は、病院廃水へのAMR対策として有効であることが示されました。今後、動物分野における廃水処理に関しても、AMR対策が求められると思います。その際は、医療分野以上に費用の問題などを考慮する必要がありますが、医療分野における取り組みを参考にし、AMR対策となる有効な方法を探っていくことが必要であると思います。

*メタゲノム解析:細菌叢を構成する細菌を網羅的に解析する手法。どのような細菌によって細菌叢が構成されているかを明らかにすることができる。

臼井 優(酪農学園大学)