お知らせ

2023年10月02日

翌日まで待たない! 早期に増殖した細菌によるディスク拡散法は、結果判定までの時間を短縮した正確な薬剤感受性試験である

 

 

Stop waiting for tomorrow: Disk diffusion performed on early growth is an accurate method for antimicrobial susceptibility testing with reduced turnaround time

 

Webber D. M., Wallace M. A., Burnham CA. D.
J Clin Microbiol. 60. E0300720. 2022.
Doi: 10.1128/JCM.03007-20

 

ディスク拡散法は、細菌の薬剤感受性を測定するための、信頼性の高い標準的な方法です。また本法は主に臨床分野において、無くてはならない方法であり、できる限り短時間で結果を得ることが求められています。今回、ディスク拡散法を実施する前の、細菌の培養時間を短縮することで、ディスク拡散法に要する時間を短縮することを試みました。

まず、臨床分離株(n=13)および品質管理株(n=8)を血液寒天培地に塗沫し、35℃で6、10、または24時間培養(標準法)した後に、培養した菌を用いて、ディスク拡散法を実施しました(図1)。ディスク周囲の阻止円の大きさは、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)のガイドラインを参考に測定しました。標準法として実施される24時間培養後のディスク拡散法の結果と比較して、FDAのガイダンスに従って計算したメジャーエラー(ME)と大きなエラー(VME)によると、6時間培養後のディスク拡散法では、1.3%のMEと1.9%のVMEが認められたが、10時間培養後のディスク拡散法では、MEは0.7%であり、VMEは認められませんでした。6時間培養および10時間培養によって得られた阻止円の大きさは、24時間培養(標準法)の結果とよく相関していました(図2)。これらの結果に基づき、さらに100株の臨床分離株を用いて、6時間培養後によるディスク拡散法を行ったところ、VMEやMEは認められず、阻止円の大きさは、標準法と高いレベルで一致しました。ディスク拡散法に早期に増殖した細菌を用いることは、標準法と比較して、結果が出るまでの時間を18時間も短縮できる簡便で正確な感受性試験法であることが明らかになりました。

ヒト医療に限らず獣医療においても、迅速に薬剤感受性に関する情報を得ることは、適切な抗菌薬を選択する上で、極めて重要なことです。ディスク拡散法に必要な時間の削減は、これまでも試験を実施する者の独自の取り組みで実施されてきたことがあるかと思われますが、今回、科学的な根拠を持って、時間を短縮させることができることが示されました。ディスク拡散法が有効に活用され、適切な抗菌薬の使用(慎重使用)、抗菌薬使用量の削減に貢献することが期待されます。

臼井 優(酪農学園大学)