お知らせ
2026年01月19日
フランスの家畜におけるコリスチン使用規制後の若齢牛及び豚由来コリスチン耐性菌の減少
Decrease in colistin resistance among young bovine and pig productions in France: relationship with colistin usage and stewardship measures
Chauvin C, Jouy E, Chevance A, Jauregy C, Sauzea X, Jarrige N, et al.,
J Antimicrob Chemother. 80, 3227-3235. 2025.
doi: 10.1093/jac/dkaf322
コリスチンは、ヒトへの使用の際に副作用を高い頻度で起こすことから、ヒトでの使用は避けられてきましたが、近年の抗菌薬の開発の停滞を背景に、多剤耐性グラム陰性菌感染症の治療に用いられる最終選択薬となっています。一方で、畜産分野では長年にわたりコリスチンが治療薬として使用されてきており、使用に伴うコリスチン耐性菌の出現の背景から、獣医領域でのコリスチンの使用量を削減することが推奨されてきました。今回、フランスにおける養豚および牛生産分野でのコリスチン使用に関するスチュワードシップ*について情報を収集し、それらが畜産分野でのコリスチン使用量および畜産動物由来細菌のコリスチン耐性に及ぼす長期的影響を明らかにするために、ヨーロッパの規制当局、関係団体および専門家からスチュワードシップに関するデータを収集し整理しました。
データは、抗菌薬使用量モニタリングシステム(国レベルの販売データおよび農場での使用データ)ならびに畜産動物由来細菌に関する耐性モニタリングプログラム(臨床分離株を対象としたものと、常在菌を対象としたもの)から収集しました。そして、2008~2023年の期間、動物におけるコリスチン曝露量の時系列データと、それに対応する大腸菌(臨床分離株と常在菌)の耐性率の時系列データを解析し、両者の関連性について解析しました。
研究期間中、フランスでは多様なスチュワードシップが段階的に導入されました(啓発活動に加え、豚の大腸菌症に対するワクチン接種など、コリスチン使用の必要性を低減する対策)。その結果、牛および豚の両分野において畜産動物へのコリスチン曝露量は有意に減少し、近年では横ばいとなっています(図1と図2)。同時に、畜産動物由来大腸菌のコリスチン耐性割合も顕著に減少し、両時系列データの間には有意な関連が認められました(図2と図3)。
フランスで蓄積されたコリスチン使用量および耐性に関する長期データにより、豚および牛における曝露量とコリスチン耐性菌の長期的推移を、スチュワードシップの影響と併せて解析することが可能となりました。使用量も耐性割合も、スチュワードシップにより有意に関連して減少した後に横ばいとなっており、動物およびヒトの健康において、コリスチンの有用性を維持するために抗菌薬の使用と並行して採用されたスチュワードシップが有効であったことを示しました。
*スチュワードシップ: 抗菌薬を責任をもって適正に使用し、その有効性を将来にわたって維持すると同時に、耐性菌の出現・拡散を最小限に抑えるための体系的な取り組み。具体的には、使用量の削減や代替手段の活用、使用方法の最適化、継続的な評価と見直しを含む包括的な管理戦略です。
臼井 優(酪農学園大学)



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