お知らせ
2026年02月02日
tet(X)保有プラスミドの伝達能と選択圧としてのテトラサイクリンの影響
Spreading ability of tet(X)-harboring plasmid and effect of tetracyclines as selective pressure
Fukuda A, Kozaki Y, Kurekci C, Suzuki Y, Nakajima C, Usui M.
Microb Drug Resist. 30, 489-501. 2024.
doi: 10.1089/mdr.2024.0115.
チゲサイクリンは多剤耐性アシネトバクターなどヒトにおける多剤耐性グラム陰性菌感染症に対する最終手段となる新しい世代のテトラサイクリン系抗菌薬です。チゲサイクリンは動物での製造承認はないものの、テトラサイクリン系抗菌薬は家畜において最も多く使用されている抗菌薬です。近年、伝達性のチゲサイクリン耐性遺伝子tet(X)が、中国の特に家畜を中心に拡散しており、家畜におけるテトラサイクリン系抗菌薬の使用がtet(X)遺伝子の選択(増加)を促進した可能性があります。そのため、家畜におけるtet(X)遺伝子およびtet(X)遺伝子保有プラスミドの拡散状況の把握に加えて、この耐性遺伝子に対する選択圧を明らかにすることが重要です。本研究では、タイの豚由来チゲサイクリン耐性大腸菌の実態を明らかにするための試験を実施しました。25検体の豚糞便から分離された107株の大腸菌に対してチゲサイクリンに対する薬剤感受性を調べ、さらにtet(X)遺伝子を保有するプラスミドの特徴を解析しました。また、tet(X)遺伝子をクローニングして大腸菌で発現させ、テトラサイクリン存在下における細菌の増殖速度への影響も評価しました。
その結果、32株のtet(X)保有チゲサイクリン耐性大腸菌が、25検体中10検体(40%)から検出されました。このことは、タイの豚農場において、tet(X)プラスミドが広く拡散していることを示唆します。また、これらのtet(X)プラスミドの伝達性を実験室内で確認したところ、大腸菌やKlebsiella pneumoniaeに伝達可能でした。
次に、接合伝達した菌株について、テトラサイクリン非存在/存在下での増殖性を検討したところ、テトラサイクリン存在下(0.25mg/L及び8mg/L)において接合伝達した菌株で接合伝達前の菌株に比べて成長速度が速く、菌数も多い傾向を示しました(図1)。また、tet(X)遺伝子をクローニングしたプラスミドを形質転換で導入した大腸菌においても、テトラサイクリン存在下(0.25mg/L及び8mg/L)において成長速度が速く、菌数も多い傾向を示しました(図2)。
以上のことから、中国以外でもアジア諸国の豚農場において、tet(X)遺伝子が拡散していることが示唆されました。また、畜産領域で使用されるテトラサイクリン系抗菌薬はtet(X)遺伝子の選択圧となっており、tet(X)遺伝子の拡散を抑制するためにはテトラサイクリン系抗菌薬の使用量の削減が重要であることが示唆されました。なお、タイから豚の輸入は禁止されているものの、日本においても豚由来大腸菌においてtet(X)遺伝子は報告されており、今後の拡散が懸念されます。日本の畜産領域において、テトラサイクリン系抗菌薬の使用量の削減が、tet(X)の拡散を防ぐためにも必要とされていると考えられます。
臼井 優(酪農学園大学)


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