お知らせ
2025年10月06日
乳房炎原因菌(大腸菌および黄色ブドウ球菌)の乳頭消毒に使用される消毒剤に対する感受性
Susceptibility of mastitis-causing pathogens (Escherichia coli and Staphylococcus aureus) to disinfectants used as teat dipping
Damasceno MD, Gonçalves MS, Pinto da Silva BH, Carneiro GB, Reis AG, Pereira BR, Borges Costa ACT, de Sousa Bueno Filho JS, Dorneles EMS, de Sá Guimarães A
Vet Microbiol. 309, 110678. 2025.
doi: 10.1016/vetmic.2025.110678.
乳房炎は酪農業における最も重要な疾病の一つであり、中でも大腸菌と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は乳房炎の原因菌として比較的よく分離されます。乳房炎の予防を目的として、搾乳前後に消毒剤による乳頭消毒が行われますが、継続的な消毒薬の曝露は薬剤耐性株の出現に寄与する可能性があります。そこで本研究では、乳房炎の原因となる大腸菌52株およびS. aureus 400株の乳頭消毒用消毒剤に対する感受性を評価することを目的として実施しました。解析を行った消毒剤はクロルヘキシジン、過酸化水素、ヨウ素、乳酸、4級アンモニウム化合物、次亜塩素酸ナトリウムです。感受性試験は、微量液体希釈法により実施し、最小阻止濃度(MIC)を測定しました。
すべての大腸菌およびS. aureusは、現場で使用される濃度よりも低い濃度のクロルヘキシジン、過酸化水素、ヨウ素、乳酸、4級アンモニウム化合物で発育が抑制されました(表1、図1)。次亜塩素酸ナトリウムに関しては、大腸菌の81%(42/52)が乳頭消毒に推奨される濃度では感性を示さず、S. aureusの35%(138/400)はMICが推奨される濃度以上で耐性でした。分離年ごとにMIC値をプロットしたところ、いくつかの消毒剤に関してはMIC値が増加する傾向が認められ、最近の分離株ほど多くの消毒剤に対して耐性傾向を示しました(図2. 3)。特にS. aureusにおいて、乳酸と次亜塩素酸ナトリウムに対しては耐性傾向を示した。
以上の結果は、酪農現場での消毒剤への継続的曝露が、感受性の低い株の選択につながる可能性を強く示しています。消毒薬の使用に当たっては用法・用量を遵守するとともに、抗菌薬耐性だけでなく消毒剤に対する感受性のモニタリングにより適正な消毒薬を選択する重要性を示す結果となった。
臼井 優(酪農学園大学)
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