お知らせ

2025年09月08日

大腸菌のin vitroバイオフィルム形成能はレタス上での生存性に関連しない

 

Correlation of in vitro biofilm formation capacity with persistence of antibiotic-resistant Escherichia coli on gnotobiotic lamb's lettuce

 

Schlechter RO, Marti E, Remus-Emsermann MNP, Drissner D, Gekenidis MT.
Appl Environ Microbiol. e00299-25. 2025.
doi: 10.1128/aem.00299-25.

 

新鮮な農産物における細菌汚染は食品安全上の懸念があり、ヒトに対する病原細菌だけでなく薬剤耐性菌も、新鮮な生食も多い葉物野菜上に残存してしまう可能性があります。環境での細菌の生存性に関わる特性の一つにバイオフィルム*形成があり、これはストレス環境に対する抵抗性を高める役割を果たします。今回、バイオフィルム形成能が葉物野菜の葉面上での生存性に影響するかを明らかにすることを目的として、試験が行われました。

最初に、新鮮な葉物野菜およびその生産環境から得られた174株の大腸菌を用いて、バイオフィルム形成能をスクリーニング評価しました。続いて、いくつかの選抜した菌株を用いて、無菌状態で育てたレタス上での定着能、生存性を評価しました。大腸菌株においてin vitro(試験管内)でのバイオフィルム形成能には明確な違いがあり、今回の試験では、4段階に分けて形成能を区別しました(図1)。当初、in vitroでのバイオフィルム形成能が高い大腸菌ほどレタスへの定着能も高いと仮定していました。しかし、レタス葉面上での生残性とバイオフィルム形成能の間には相関は認められませんでした(図2)。一方で、すべての試験菌株はレタスの葉面上で、少なくとも21日間生存しました(図2)。このことは、加熱や洗浄が不十分なレタスを含む葉物野菜に残った薬剤耐性菌を、喫食してしまう食品安全上のリスクがあることを示唆しています。

以上の結果は、葉面上における薬剤耐性菌の複雑な生存性を示しており、野菜を喫食する場合は、加熱するか十分に洗浄することが必要です。

*バイオフィルム: バイオフィルムは、細菌などの微生物が自ら分泌する粘性物質に包まれて、表面に集団で定着した構造体です。この構造により、微生物は抗菌薬や外的ストレスから保護され、生存しやすくなります。

 

臼井 優(酪農学園大学)