お知らせ
2025年06月23日
中国での12年にわたる豚農場での薬剤耐性に関わるゲノムサーベイランス
Genome-based assessment of antimicrobial resistance of Escherichia coli recovered from diseased swine in eastern China for a 12-year period
Li J, Chang J, Ma J, Zhou W, Yang Y, Wu J, Guan C, Yuan X, Xu L, Yu B, Su F, Ye S, Chen Y, Zhao G, Tang B.
mBio. e00651-25. 2025.
doi: 10.1128/mbio.00651-25.
世界的な薬剤耐性(AMR)の増加は、医療や獣医療等での抗菌薬の使用により加速されており、公衆衛生上の脅威となっています。ヒトの臨床現場におけるAMRは広く研究されている一方、疾病に罹患した家畜由来細菌のAMRに関する研究は不足しています。そこで今回、中国において12年間にわたり感染症に罹患した豚から分離された114株の大腸菌について、詳細な解析が実施されました。
その結果、99%の大腸菌が多剤耐性を示しました(図1)。アンピシリンおよびアモキシシリン/クラブラン酸に対しては分離株の全て(114株)が耐性を示し、シプロフロキサシンに対しては96.49%、テトラサイクリンに対しては94.74%が耐性を示しました。さらに、コリスチンに対しては21.05%、チゲサイクリンに対しては1.75%が耐性を示しました。これら分離株について、全ゲノム解析を行ったところ、76種類の薬剤耐性遺伝子が検出されました。ヒト医療においても重要な抗菌薬であるコリスチン耐性に関わる耐性遺伝子であるmcr-1は18.42%、mcr-3は4.39%、チゲサイクリンに関わる耐性遺伝子tet(X4)は1.75%の株から検出されました。
今回、mcr-1とmcr-3の両方を保有する腸管毒素原性大腸菌(ETEC)が、初めて検出されました。また、中国では2017年に豚に対してコリスチンを使用することが禁止されましたが、禁止後、mcr-1の検出率が有意に低下する一方で、フロルフェニコールに対する耐性率は2018〜2021年に94.29%と上昇(2010〜2017年は79.55%)しました(図1)。以上の結果、これまで中国では公的な調査成績の公表が不十分であったところ、今回の研究は感染症に罹患した豚由来大腸菌のAMRプロファイルに関する重要な知見を提供しました。
臼井 優(酪農学園大学)
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