お知らせ

2022年11月21日

堆肥への副資材(トウモロコシの茎の残渣)の添加が薬剤耐性菌に及ぼす影響の解明

Corn stalk residue may add antibiotic-resistant bacteria to manure composting piles
Staley, Z. R., Schmidt, A. M., Woodbury, B., Eskridge, K. M., Durso, L., Li, X.
J. Environ. Qual. 49(3):745-753. 2020.

何も処理していない家畜糞尿を土壌へ散布すると、薬剤耐性菌(ARB)を含む病原細菌が土壌/環境に拡散し、公衆衛生上重要な影響を及ぼす懸念がある。家畜糞尿の堆肥化は、トウモロコシの茎の残渣のような炭素に富む副資材を家畜糞尿に加え、微生物の活動を促進し熱を発生させることでARBを含む病原微生物を不活性化し、好ましい炭素/窒素比率を得る家畜排泄物の管理法である。しかし、ARBを減少させるために副資材添加堆肥と無添加堆肥を比較したところ、副資材から堆肥にARBが拡散していることが示された(図)。そこで、副資材として一般的に使用されているトウモロコシの茎の残渣にARBが多く含まれているのではないかという仮説を立てた。この仮説を検証するため、ネブラスカ州全域のトウモロコシの茎の残渣のARBの存在について調査した。その結果、検査したサンプルのうち、54%から薬剤耐性大腸菌または薬剤耐性腸球菌が検出された。また、トウモロコシに対して農薬を使用している場合、ARBがより多く存在する傾向があった。以上の結果は、副資材が堆肥中のARBの発生源となりうることを示唆し、ARB対策となる堆肥化のためには副資材の適切な選択、使用が必要となることが示された。

一般的に、堆肥化における副資材は堆肥化の過程において発酵を促すことでARB対策に有効であると考えられてきた。今回の結果は、副資材も種類や状態によっては、ARB対策として有効ではないことを示している。今後、どのような副資材を用いることが、ARB対策として有効であるかを、耐性遺伝子の存在や細菌叢の変化も含めて解明していく必要がある。また、この報告では、農薬の使用とARBの関係も示唆されており、動物用抗菌薬以外の影響にも着目している点が興味深い。今後、農薬使用と植物が保有するARBの関係についても、明らかにしていくことが必要である。

(酪農学園大学 臼井 優)