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2022年11月07日

アイルランドの農場から食卓におけるClostridioides difficileの分布

 

アイルランドの農場から食卓におけるClostridioides difficileの分布
The prevalence of Clostridioides difficile on farms, in abattoirs and in retail in retail foods in Ireland

Marcos P, Whyte P, Rogers T, McElroy M, Fanning S, Frias J, Bolton D.
Food Microbiol. 103781. 2021.

 

CDI感染症は、Clostridioides difficileによって引き起こされ、偽膜性大腸炎や抗菌薬関連下痢症の原因となる。動物からの分離も報告され、近年市中感染の割合が高くなっており、動物との関連が指摘されている。今回、アイルランドの農場、食肉処理場、小売店におけるC. difficile の汚染率を調べた。

その結果、農場から食肉処理場、小売店と、食品流通過程を進むごとに汚染率は低くなっていた。鶏農場の土壌からは、30サンプル中25サンプルから検出された(83%)。市販食品については、240サンプル中9サンプルから検出された(3.8%)。しかし、小売店における野菜やすぐに食べることのできる加工済みサラダなどからもC. difficileが検出され、 市販食品も汚染されていることが明らかとなった。検出された菌株の毒素遺伝子型は、さまざまであった。環境中にも存在するC. difficileは土壌、水、肥料から食品を汚染する可能性がある。食品を介して、農場由来のC. difficileがヒトへ伝播する可能性もあり、食品汚染についても注意が必要であることが示された。

この論文では、毒素遺伝子型までしかタイピングを行なっておらず、農場から食卓までのC. difficileの関連を示したいのであれば、リボタイピング、加えて次世代シークエンス解析などを行うべきである。ただし、農場から食卓までのサンプルについて、一貫して収集して、C. difficileの汚染について調べたデータはほとんどないため、貴重なデータとなった。他国のデータも含めて、市販食品からのC. difficile分離の報告は増えており、市中感染の一因として重要だと考えられる。今後も、日本を含む世界中での幅広い食品、流通過程におけるC.difficile のさらなる研究が必要である。

 

(酪農学園大学 臼井 優)