お知らせ
2026年07月21日
北海道における野生のシカおよびキツネ由来大腸菌による持続可能な薬剤耐性モニタリングの試行
Antimicrobial susceptibility of Escherichia coli isolated from wild deer (Cervus nippon yesoensis) and fox (Vulpes vulpes schrencki) in Hokkaido: a pilot study on sustainable antimicrobial resistance monitoring
Kawabata Y, Fukuda A, Sato R, Kouguchi H, Nakajima C, Suzuki Y, Makita K, Asai T, Usui M.
J Vet Med Sci. 88, 642-648. 2026.
doi: 10.1292/jvms.25-0442.
日本では、ヒトおよび獣医領域において持続可能な国家レベルの薬剤耐性菌モニタリング体制が確立されています。一方、野生動物を含む環境分野における薬剤耐性菌モニタリングは、報告としてはあるものの継続したモニタリングが確立されておりません。そこで今回、エゾシカ肉処理施設に搬入された野生動物としてのシカおよびエキノコックス(Echinococcus multilocularis)の調査対象となった野生のキツネを活用した、持続可能な野生動物での薬剤耐性菌モニタリングを試行しました。
シカおよびキツネの直腸スワブから、抗菌薬無添加および抗菌薬(セフォタキシム(CTX)またはナリジクス酸(NA))添加のChromagar ECC培地を用いて、薬剤耐性菌の指標菌として広く用いられる大腸菌を分離しました。分離株について薬剤感受性試験を行い、PCR法によりβ-ラクタマーゼ遺伝子を検出しました。さらに、これらの遺伝子を保有するプラスミドについて全ゲノムシーケンス解析を行いました。
その結果、抗菌薬無添加培地では、シカから104株(103頭/120頭、85.8%)、キツネから61株(56頭/99頭、56.6%)の大腸菌が分離されました(表1)。一方、CTXおよびNA添加培地では、それぞれ2株および3株が分離され、いずれもキツネ由来株でした。シカ由来株は、試験したすべての抗菌薬に対して感性を示したのに対し、抗菌薬無添加培地由来のキツネ株(n=61)のうち0~11.5%が試験した抗菌薬に対して耐性を示しました(表2)。また、キツネ由来の3株において、プラスミド上にβ-ラクタマーゼ遺伝子が検出され、1つのプラスミドは北海道で分離されたヒトの尿道由来大腸菌が保有するプラスミドと高い相同性を示しました(図1)。このようにキツネ由来株からのみ薬剤耐性菌が分離された理由は、さらに検討する必要があるものの、食性の違いが反映した可能性があります。キツネは雑食動物であり、シカは草食動物であることから、キツネはシカより他の動物やヒトの影響を受けやすい可能性があります。
以上より、本研究は、エゾシカ肉処理施設に搬入された野生のシカおよびエキノコックス調査対象の野生キツネを活用することで、持続可能な薬剤耐性モニタリングが可能であることを示しました。なお、今年5月に採択されたWHOの改訂された薬剤耐性グローバルアクションプラン(Draft updated global action plan on antimicrobial resistance 2026–2036)では、薬剤耐性対策として環境が重点項目とされており、薬剤耐性モニタリングの重要性が益々高まるものと思われます。
臼井 優(酪農学園大学)



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