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2026年06月15日

日本における環境水およびアライグマ由来 Escherichia albertii の出現状況とゲノム特性に関する統合的研究

 

Integrated study on the occurrence and genomic features of Escherichia albertii in environmental water and raccoons in Japan

 

Hinenoya A, Tagami R, Awasthi S, Xu B, Hatanaka N, Yamasaki S.
Appl Environ Microbiol. 92, e0007626. 2026.
doi: 10.1128/aem00076-26.

 

Escherichia albertiiは大腸菌と同じEscherichia 属の細菌で、2003年に新菌種として発表されました。下痢原性大腸菌と類似した性状を示し、ヒトに腸管感染症を引き起こす人獣共通感染症起因菌であり、特に日本において複数のアウトブレーク(集団発生)との関連が報告されています。本菌の環境中での生態および伝播動態をより深く理解するため、大阪において環境水および野生アライグマを対象とした疫学調査を実施しました(図1)。

菌種特異PCRにより、E. albertiiは河川水の76.6%、アライグマの55.7%から検出されました(表1)。2地点の河川において30分間隔で3回連続して採水を行ったところ、いずれも一貫してPCR陽性であり、水流が存在する条件下でも同一地点において繰り返し検出可能であることが示唆されました。分離された147株の全ゲノム解析の結果、すべての株が臨床株に関連する病原遺伝子を保有しており、加えて顕著なゲノム多様性、系統の重複、および両由来(環境水およびアライグマ)間での遺伝的に同一な菌株の存在が確認されました(図2)。特に、同一都市・同一時期に採取されたアライグマ由来株と水由来株の1組は、20未満の一塩基多型(SNP)*の差しか示さず、パルスフィールドゲル電気泳動でも1バンド差のみであったことから、両由来間での伝播の可能性が示唆されました(図3)。さらに、一部の環境由来株およびアライグマ由来株は、ヒト臨床株と近縁であり、2017年の大規模アウトブレイクに関連する株も含まれていました。

これらの結果は、下痢原性大腸菌と誤同定されやすいE. albertiiが日本の水環境および野生動物に広く分布しており、ヒト感染を引き起こす潜在的リスクを有することを示しています。今回の研究は、E. albertiiの生態および公衆衛生上のリスクに関する新たな知見を提供するとともに、この新興病原体の監視におけるOne Healthアプローチの重要性を示しています。なお、本菌感染症の行政的位置づけは結論が出ておらず、疫学情報の収集に留まっている状況にあり、今後の動向に注視する必要があります。

 

*一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism); DNA配列中の1塩基(A, T, G, C)の違いを指す最も基本的な遺伝的変異。

 

 

臼井 優(酪農学園大学)