お知らせ

2026年03月02日

blaCTX-M-15およびblaCTX-M-55を保有するESBL産生Enterobacter cloacae complex とKlebsiella pneumoniaeは乾燥水産食品を介したESBL産生菌の世界的拡散リスクとなり得る

 

 

ESBL‑producing Enterobacter cloacae Complex and Klebsiella pneumoniae harbouring blaCTX‑M‑15 and blaCTX‑M‑55 potentially risk the worldwide spread of ESBL‑producing bacteria through contaminated dried fishery products

 

Nakayama T, Kasumi Y, Saito M, Ohata N, Yamaguchi T, Jinnai M, Kumeda Y, Hase A.
Curr Microbiol. 82, 593. 2025.
doi: 10.1007/s00284-025-04545-y.

 

薬剤耐性遺伝子を細菌間で伝達するプラスミド性薬剤耐性菌の伝播は、公衆衛生上、重大な問題となります。この研究は、乾燥水産食品から分離された腸内細菌目細菌(Enterobacterales)が保有するプラスミド性薬剤耐性遺伝子の存在を明らかにすることを目的として実施されました。

ベトナムの市場で乾燥水産食品81検体、日本で乾燥水産食品23検体を購入し、セフォタキシムまたはメロペネムを添加したCHROMagar ECC培地を用いて、耐性腸内細菌目細菌の分離を行いました。分離された株について、ディスク拡散法によって薬剤感受性を調べました。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)*産生株については、マルチプレックスPCRによりESBL型別を行いました。さらに、多剤耐性を示したEnterobacter cloacae AD2-1株については、全ゲノムシークエンス解析を実施しました。

医療上重要なセフォタキシム耐性菌はベトナム検体の22%、メロペネム耐性菌は27%から分離されました(表1)。一方、日本検体では、セフォタキシム耐性菌が17%、メロペネム耐性菌が4%から分離されました。計98株が分離され、そのうちベトナム検体ではE. coli 29株、Enterobacter cloacae complex 28株、Staphylococcus属菌 19株、Klebsiella pneumoniae 9株が検出されました(表2)。マルチプレックスPCRおよびシークエンス解析により、E. cloacaeおよび K. pneumoniae分離株において、ESBL遺伝子である blaCTX-M-15およびblaCTX-M-55が検出されました(表3)。ベトナム産乾燥魚から分離された E. cloacae AD2-1 株は、試験をした14種類全ての抗菌薬に耐性を示し、約300 kbのIncHI2プラスミド上に複数の薬剤耐性遺伝子を保有していました(図1)。したがって、E. cloacae AD2-1株は、国境を越えた薬剤耐性拡散のリスクとなり得ると考えられました。

以上の結果は、ベトナム産乾燥水産食品の薬剤耐性菌リスクを示しています。東南アジアは、他の地域以上に薬剤耐性リスクが高いことが示されており、特に東南アジアからの輸入食品について、注意が必要であると言えます。今後、データが不足している水産食品についての実態を明らかにするとともに、リスクを軽減させるための対策が講じられることが望まれます。

 

*基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL); β-ラクタム系抗菌薬を分解する酵素の基質が拡大し、セファロスポリン系抗菌薬やモノバクタム系抗菌薬を加水分解し失活させる。多くはプラスミド介在性で水平伝播しやすい。

 

臼井 優(酪農学園大学)