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2024年04月08日

病原性細菌に対する抗菌ブルーライトの活用: 作用機序、食品産業への応用、応用への課題

 

Antimicrobial Blue Light versus Pathogenic Bacteria: Mechanism, Application in the Food Industry, Hurdle Technologies and Potential Resistance

Hadi J, Wu S, Brightwell G.
Foods. 9. 1895. 2020.
Doi: 10.3390/foods9121895.

 

抗菌ブルーライト*は、主に細菌内部の光感受性物質を活性化することで、細菌細胞を攻撃する活性酸素種(ROS)が生成されることで抗菌作用を示す(図1)。これまでの研究によると、抗菌ブルーライトには様々な作用があることが報告されている。ヒトに対しては、目に光障害を与える可能性があるが、皮膚を含む人体にはほとんど害がないことが知られており、その抗菌作用の様々な産業への応用が期待されている。特に食品に対しては、食品の食感や栄養特性にはほとんど影響しないため、食品表面への殺菌処理として活用される期待が高い(肉製品や海産物など)。


細菌に汚染された食品に対して抗菌ブルーライトを照射することで、どの程度の細菌が死滅するかを調べた研究がある(図2)。食品への応用にあたり、食品の特性が抗菌ブルーライトの効果に対して影響を受けることが示されている。吸収材料(例えば、肉表面のタンパク質)存在下では抗菌活性が減少したり、光感受性物質(例えば、牛乳のリボフラビン)存在下では抗菌活性が増強したりすることが知られている。


抗菌ブルーライトの抗菌活性に対する耐性は報告されていない。しかし、遺伝子変異により、耐性菌が出現する可能性があるが、発生する確率は薬剤耐性よりも低いことが示唆されている。
今後、応用されるに当たって、細菌種ごとの細胞内光感受性物質の量や種類の違いを解明することが必要である。また、照射に伴い熱が発生することから、多量の照射による肉質への悪影響も懸念される。今後、これらの課題が解決され、さらなる活用が進められることが期待される。


現在、抗菌ブルーライトの産業への応用は、主に食品分野での検討が進められる。抗菌ブルーライトは、人体だけでなく動物に対しても無害である。そのため、食品に限らず、産業動物分野での応用の可能性もある。今後、産業動物分野においても、抗菌ブルーライトによる細菌感染症の制御に関する研究が進められることが期待される。

 

*抗菌ブルーライト;特定の波長の光線(通常、約400nmから470nmの範囲)で、細菌、ウイルス、その他の微生物を殺菌する技術となるもの。

臼井 優(酪農学園大学)