お知らせ

2026年09月04日

フロルフェニコールによるプラスミド性リネゾリド耐性遺伝子の選択と持続

 

Selection and maintenance of mobile linezolid-resistance genes and plasmids carrying them in the presence of florfenicol, an animal-specific antimicrobial

 

Fukuda A, Usui M.
Access Microbiol. 0, 000997.v2. 2025.
doi: 10.1099/acmi.0.000997.v2.

 

プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子(optrA、poxtA、cfr) は、リネゾリドおよびフロルフェニコールに対する耐性を付与し、世界中のさまざまな由来の細菌から検出されています。リネゾリドは、ヒトの臨床現場において、特にバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に対して最終手段として使用される抗菌薬である一方、フロルフェニコールは獣医療の臨床現場で一般的に使用されている抗菌薬です。そのため、獣医療におけるフロルフェニコールの使用が、リネゾリド耐性菌の選択圧となり、獣医療現場からヒト医療現場へ伝播することが懸念されます。そこで今回、プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子が腸球菌(Enterococcus faecalisおよびEnterococcus faecium)のフロルフェニコール存在下での生育に及ぼす影響を評価しました。

プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子(optrA, poxtA, cfr)を保有することで、腸球菌のリネゾリドおよびフロルフェニコールに対する感受性は低下しました。そして、プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子保有腸球菌は、フロルフェニコール存在下(4μg/mLおよび32μg/mL)においても、発育が阻害されることはありませんでした(図1)。一方、フロルフェニコール非存在下では、プラスミドの保有によりフィットネス*が減少しました(プラスミド非保有株に比べて、プラスミド保有株の生育が悪くなった)(図2)。

以上のことから、フロルフェニコールは、プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子を保有する腸球菌の選択圧となっていることが示されました。獣医療において汎用されるフロルフェニコールがリネゾリド耐性菌の選択圧となり、プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子の拡散を引き起こす可能性があります。プラスミド性リネゾリド耐性遺伝子の拡散を制御し、リネゾリドの有効性を維持するうえで、獣医療におけるフロルフェニコールの適正使用が極めて重要であることが示されました。したがって、この論文では、獣医師や生産者が使用する抗菌薬が、意図しない医療上重要な耐性菌を選択する可能性があることを示しており、常にワンヘルスの視点で抗菌薬の適正使用を意識する必要があります。

*フィットネス: 特定の環境下において細菌がどれだけ効率よく生存し、子孫(増殖した菌体)を残して集団内で遺伝子を後世に伝えられるかを示す指標。

 

臼井 優(酪農学園大学)