お知らせ

2026年04月16日

オランダにおける家畜農場および食肉からのメチシリン耐性Staphylococcus aureus GG0398の分離

 

Methicillin-resistant Staphylococcus aureus GG0398 on livestock farms and meat in the Netherlands

 

van Duijkeren E, Brouwer MSM, Wullings B, Rapallini M, Wit B, Cuperus T, Hengeveld PD, Witteveen S, Hendrickx APA, Dierikx CM, Veldman KT
J Glob Antimicrob Resist. 43, 79-85. 2025.
doi: 10.1016/j.jgar.2025.04.007.

 

 

メチシリン耐性 Staphylococcus aureus(MRSA)は医療における多剤耐性菌として最も重要視される細菌です。最近、家畜からも分離されるため、ヒトへの伝播が懸念されています。今回、農場、同一農場で働く/生活する人々、および食肉におけるMRSAの陽性率を調査し、その関連性を明らかにすることを目的として試験を実施しました。

方法は2018年から2023年にかけて、オランダのブロイラー、豚、肥育子牛、乳牛、羊の農場、その農場で働く/生活する人々、および小売食肉から採取したサンプルを、増菌培養および選択培地を用いて選択分離しました。さらにMRSAに対して次世代シーケンシング解析を実施し、mecA/mecC、PVL*の検出およびジェノグループ(GG)**の同定を行いました。

その結果、149農場中113(75.8%)の豚農場でMRSAが分離同定されました(表1)。肥育子牛農場では44/173(25.4%)、乳牛農場では11/181(6.1%)、羊農場では7/156(4.5%)、ブロイラー農場では0/195(0%)と分離率は豚農場に比べて低い傾向でした。農場で働く/生活する375人のうち、17人(4.5%)が鼻腔内にMRSAを保菌していました。農場由来の分離株について、2株を除き、すべてがGG0398(= CC398)***に属していました。17人の農家から分離された17株について、ゲノム解析を実施したところ、子牛農家および乳牛農家について、同じ農場の動物と農家の分離株は関連していませんでした(図1)。羊農家の場合、羊から得られた分離株と農家の分離株について、関連があることが示唆されました(図1のAnimal 1とFarmer 1)。乳牛農家の分離株は国内の別の農場の乳牛から得られた分離株と完全に一致しており(図1のAnimal 5とFarmer 2)、子牛農家の分離株は別の農場の子牛から得られた分離株と近縁でした(図1のAnimal 4とFarmer 3)。次に、オランダの小売食肉4,529検体を解析したところ、412検体(9.1%)がMRSA陽性でした(表2)。最も高い汚染率を示したのは鶏肉でした。肉由来株の大部分(97/148; 65.5%)はGG0398に属していました。すべての分離株は1株を除きmecAを保有し、全株がPVL陰性でした。

オランダにおいて、2009年以来、獣医領域における抗菌薬使用量は70%以上削減されているにもかかわらず、依然として大部分の豚農場はMRSA陽性でした。また、農場従事者は、一般集団と比べて鼻腔内にMRSAを保菌するリスクが高い傾向を示しました。食肉はしばしばMRSAに汚染されていますが、その伝播から考えて消費者にとっては限定的なリスクであると考えられました。分離されたMRSAのほぼすべてがGG0398に属しており、このタイプのMRSAが家畜や食肉で持続的に優勢であることが確認されました。

なお、日本の豚からもCC398に分類されるMRSAの分離報告が増えています。この報告にもあるように農場従事者は、MRSAの保菌者となるリスクが高い傾向があることからも、日本においても注意が必要であると考えられます。

 

臼井 優(酪農学園大学)

 

*PVL: 白血球を破壊する毒素で、PVL陽性菌は皮膚感染症や壊死性肺炎などの重症感染症の原因となることがあります。PVL陽性菌は感染力や病原性が高い傾向があります。

**GG: 細菌やウイルスなどの微生物を遺伝子配列に基づいて分類したグループのことです。例えば黄色ブドウ球菌の場合、MLST(多遺伝子塩基配列型解析)などで得られた塩基配列の類似性に基づき、似た遺伝的背景を持つ株をまとめて分類します。クローナルコンプレックス(CC)がMLSTに基づいた進化的に近縁な配列型(ST)をまとめたグループであるのに対して、GGはより大規模なゲノムデータやSNP解析を用いた遺伝的分類として使用されることが増えています。

**GG398: GG398は、家畜に関連する黄色ブドウ球菌(特にMRSA)の遺伝子型で、古典的なMLSTのCC398に相当します。このグループの菌はmecAを保有することが多く、家畜から人へ感染することも報告されています。